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【北村大臣の答弁を聞きながら、地方創生について考えてみる】

2020/02/12

内閣府所管の「地方創生、規制改革」を担当する北村誠吾大臣が、維新以外の野党の追及のターゲットとなっている。確かに答弁に立つスキルは到底十分とは言えず、見ている方が心配になってしまう状態は、大臣としての資質を問われても仕方がない。

しかし一方で、野党もやり方が幼稚で不快である。やけに威圧的な態度で、失言を誘う質問を繰り返し、政府参考人(官僚)の同席を拒否して、大臣が答弁に窮したら騒いで退席してパフォーマンス。

こんな状況を見て、国民はどう思うのだろうか。私は非生産的であると思えてならない。それにしても、一部の野党議員はなんであんなに偉そうなのか、理解に苦しむ。

 

そんなグダグダな国会の有り様はさておき、一度落ち着いて「地方創生」について考えてみることにする。

 

出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住み良い環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的とした「地方創生」が始まって5年が経過した。そのための大戦略である「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、2015年〜2019年の5カ年を第1期として実施され、今年2020年から第2期に突入する。

 

第1期を振り返ると、地方創生関連交付金に関わる事業は、この5年間で約2,000件、金額にすると2,000億が実施され、それぞれ個別の事業の効果検証は良好と総括されている。

また、各基本目標と各施策にKPI(Key Performance Indicators、重要業績評価指標)が設定され、それぞれに検証がなされている。

ちなみに評価は下記のように3段階に分けられているが、

①達成している、または達成に向けて進捗している(=いわゆる合格点)

②達成していない(=不合格)

③その他(主に数値目標の設定しにくいもの)

この検証結果を見ると、KPIの70%以上が「①達成しているまたは達成に向けて進捗している」となっており、数値目標の無い「③その他」を除外すると、90%以上が合格点であると総括されている。つまりほとんどうまくいっているという訳だ。

しかし一方で、東京圏への転出入というKPIはむしろ悪化しており、東京一極集中の是正はというと、全く改善されていない。三大都市圏であっても、大阪圏、名古屋圏も転出増になっており、当初の目標である2020年に東京圏への転出入を均衡させるのは事実上不可能である。

 

この事実をどうとらえるか。

設定されたKPIの90%以上が合格点となっているにもかかわらず、東京圏への転入超過は進み、東京一極集中は加速しているという厳しい現実。

ここに私の一番の問題意識がある。

 

地方創生をめぐる様々な取り組みの中で、確かに小さいながらも地域レベルの成功事例は散見されてきた。各地域の努力は全く否定はしない。しかし、東京一極集中を是正するというマクロでの成果が出ているとは言えず、むしろ悪化しているという現状を冷静に分析するならば、そもそも戦略の設計思想が間違っているのではないかという根本的問いを投げかけるべきである。

 

企業に例えると、「各部門からはKPI達成が90%超えて頑張っていると報告が上がっているのに、会社全体は傾き続けているという状態」に等しい。

にもかかわらず、今年から始まった第2期総合戦略では、「継続は力なり」という姿勢を基本とすると明記されていて、先日の予算委員会の総理の答弁では、「これまでの政策がダメだったということではなく更にパワーアップして力を入れていく」とのこと。つまり、方向性としては第1期の方針を継続するということだ。

企業ならば、こんな甘い経営判断をしていれば、早晩潰れてしまうだろう。

 

加えて一点指摘しておきたいことは、「①達成しているまたは達成に向けて進捗している」と評価されている項目の中に、達成率のかなり低いものも含まれている。

例えば民間活力を地方へ呼び込む事を狙った政策のKPIである「企業の地方拠点強化件数」は、2020年目標値が7,500件に対して、現在値は1690件で進捗率23%。これもひとくくりに合格点と認識されてしまう「①達成しているまたは達成に向けて進捗している」にまとめてしまうのは評価が甘すぎるし、明らかにミスリードが起こる。

報告者側としては、「なんとか良い方向に向かっているんですよ」と言いたいのはわかるが、いかにも官僚的な総括であり、厳しい競争や淘汰と隣り合わせのビジネスマンの報告書なら落第点だろう。

 

ではどうすべきか。

東京一極集中の是正こそが本丸であるという認識をもう一度明確化し、深刻な危機感を持って、東京から地方へ「ヒト・モノ・カネ」が逆流していくような大きな流れを創り出していくべきというのが私の考えである。

 

ちなみに、各地をみれば人口増に成功している市町村もある。しかしその実情をみれば、特にその多くは子育て世代を近隣市町村と取り合っているのが現実。成功例としてよく挙げられ、素晴らしい取り組みを進めている兵庫県明石市や千葉県流山市なども、近隣市町村からの人口流入を明確に狙って施策を打っている。

 

では、東京から人口を「逆流」させるための大きなうねりを創り出す策とは何か。

例えば、経産省のような中心的省庁の移転、首都機能を代替する都市の必要性、道州制や統治機構改革、消費税の地方税化といった権限財源の大幅な移譲、世界標準で勝負できるテクノロジーを実装したスーパーシティ構想、IR、地方移住を促進する設計を盛り込んだベーシックインカムのような再分配政策など、「ヒト・モノ・カネ」という資源が大きく動くような旗振りを政治サイドの意思としてやるべきである。

これこそが、役人にはできない「大きな方向性を示して旗を振る」という、政治サイドの役割だ。

 

先日の予算委員会での総理の答弁で「景気の上昇局面では東京への人口流入が進む」という主旨の発言があった。もしそうであれば「景気の浮揚と東京一極集中の是正は両立しない」という事になってしまう。

それこそ、社会構造を新しい時代にあったものに変えていかなければならないのではないか。

 

中央からのバラマキを各市町村が陳情して取りに行くという古い設計思想を前提とした戦略では、もはや東京一極集中の是正は不可能である。社会構造を根本的に問い直し、東京から地方へ資源が逆流していく新たな社会構造を創り上げていくべきである。

 

私は、地方創生や東京一極集中の是正を真剣に考えれば考えるほどに、西日本の中心的都市である大阪の役割が重要である思っている。

大阪が東京と並ぶもう一つのエンジンとして成長をけん引していける力を持った都市になるという事が、日本の社会構造を変えていく一点突破になりうる。東京一極集中を仮に「大きな岩」であると例えるならば、地方分権型社会は「中くらいの複数の岩」に分散させる事だと思うが、初めからバラバラにするのは難しい。だから一番初めにやらなければならない事は、「大きな力で二つに割る」ことである。

 

2025年の万博開催を見据えて多方面でビッグプロジェクトが動き出す中、今年は11月に大阪都構想の住民投票が予定されている。

まさに、中央集権型から多極分散型へ、東京一極集中から東京大阪のツインエンジン型への第一歩として、地方創生の観点からも重要な1年となる。

 

※本件については、予算委員会の質疑でもさせていただきましたので、興味がある方は是非ともご覧くださいませ。

2020年2月5日衆議院予算委員会「地方創生について」

2020年2月10日衆議院予算委員会「大阪都構想について」

 

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