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給付付き税額控除とベーシックインカムの論点整理

2021/02/26

日本維新の会は、これまでの選挙公約で「給付付き税額控除」を訴えてきましたが、実は過去には「ベーシックインカム(BI)」という文言も公約に入っていた時期もあります。
今党内において、ベーシックインカムを含む「新所得倍増計画」という政策パッケージを打ち出していこうという議論が進んでいます。

そこで改めて、給付付き税額控除とベーシックインカムの関係性についてまとめておきたいと思います。

 

 

まず、給付付き税額控除と一口に言っても類型が沢山あります。
ちなみにベーシックインカムを、配り方だけ給付付き税額控除方式にすることも可能です。その場合、見かけ上の給付額は小さくなりますが、給付と税額控除を合計すると財源規模は同じであり、BIより給付付き税額控除の方が財源が小さい訳ではありません。

給付付き税額控除を採用している諸外国の制度でも、全く同じものはなく、ほぼ全部違います。どのタイプを採用するかで賛否は分かれる訳ですから、ベーシックインカムと給付付き税額控除の優位性を比べるなら、まずどの類型かを設定しないと議論を始められないわけです。

中央大学法科大学院特任教授の森信茂樹先生の整理でも、その類型として、①児童税額控除、②勤労税額控除、③社会保険料負担軽減税額控除、④消費税逆進性対策税額控除などを挙げていますが、更に細かい設定にまで目を向ければ、相当なオーダーメイドとなり、結局は何を政策目的の柱に置くかが重要となります。

もし仮にベーシックインカムと比較するならば、下記に挙げた点くらいは、議論のスタートとして最低限の設定が必要だと思います。
・課税最低限度をどのラインにおくか
・逓増、定額、逓減をどう組み込むか
・家族単位か個人単位か
・各種所得控除は無くすか
・就業条件や資産条件などの受給条件
・生活保護との整合性
・財源は
・事前型か事後型か
・執行官庁は

また、給付付き税額控除でも、受給要件を所得(フロー)だけで計算すると資産リッチでも受給してしまう可能性が生じます。
アメリカでは各種控除の不正受給に対する調査に多くの行政コストがかかり、非公正性と制度の複雑性が問題視されていると聞きます。

 

 

給付付き税額控除は事後的な所得補償システムなので、生活保障機能が弱いという課題点も残ります。つまり、災害や感染症のような有事の場合、セーフティネットとしてちゃんと機能するかどうか。ここは事前型所得補償のベーシックインカムの方が優れている点といえるでしょう。

どちらかと言えば、ベーシックインカムの方が圧倒的にシンプルな制度であり、理解しやすく、国民的議論もしやすいという良さがあります。これは重要な視点です。微修正の積み重ねで歪みが大きくなった税制と社会保障制度をもう一度ゼロベースで考えるためのスタートとしてもベーシックインカムは有効です。

ベーシックインカムを軸に社会保障全体を整理統合し、年金や生活保護の問題点を解決。医療・介護・福祉・教育・雇用などの現物支給の社会保障は残して別枠で改革。そして税制と労働市場改革を一体的に改革することで、成長軌道を描く準備としてチャレンジのためのセーフティネットを整備する。これが私たちが考える「新所得倍増計画」の政策目的の柱の一つです。

 

 

以上、いろいろまとまりなく書いてしまいましたが、ベーシックインカムは給付付き税額控除の類型の一つ(=進化版)と言えると思っています。
どちらも、これまでずーっと歪んだ箇所に絆創膏をペタペタ貼って対処してきた現行の税制と社会保障制度の問題を抜本解決しよう!というアイデアであり、同じ方向性の政策思想です。

謂わば「現状維持&微修正 vs 新しい合理的な社会システムの構築」という戦いです。
これからの国会論戦を通じて、政府与党のプランAと日本維新の会のプランBを戦わせていきますので、乞うご期待ください。

 

 

 

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