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外国人政策及び「移民問題」に関する政策提言
2025/09/20
日本維新の会では、私のみならず多くの議員が外国人政策について国会質疑や具体的な提案を各所でおこなってきました。この度、党の外国人政策を人口戦略調査会にて【外国人政策及び「移民問題」に関する政策提言】を取りまとめ、昨日9月19日、鈴木馨祐法務大臣に手交しました。
20250919_外国人政策及び「移民問題」に関する政策提言
20250919_外国人政策及び「移民問題」に関する政策提言(記者発表資料)
提言書はマクロ視点、ミクロ視点、安全保障視点と3部構成になっておりますが、この報告書の最大の肝は、「外国人比率の上昇抑制や総量規制」です。これから国民的議論をしていかなければならない大変重要な課題として真剣に取り組んでまいります。
提言書の全文と結語を引用いたしましたので、ぜひご覧くださいませ。
◾️前文:政策思想と基本認識
日本政府は現在年間30万人規模で推移する外国人受入れについて、十分な国民的合意を形成する意思も、戦略的なビジョンもないまま、事実上の「移民国家」に向かって突き進んでいる。
2024年に廃止が決まった技能実習制度の後継として2027年から施行予定の「育成就労制度」や特定技能制度の拡充は、制度を衣替えしたにすぎず、定住を見据えた実質的な移民政策でありながら、政府は未だに「移民政策ではない」と強弁し、正面から向き合うべき課題を曖昧にしている。
政府が事実上の移民政策を推進する背景には、我が国の生産年齢人口の急激な減少がある。これは、政府がこれまでに、農業、建設、介護、製造業など、人手不足に悩む業界からの要請があるたびに門戸を開いてきた事実からも明らかである。
しかし、このような国家全体でのグランドデザインを欠いたボトムアップ型の積み上げでは、地域社会のキャパシティを超える事態を招きかねない。仮に現在のペースで外国人の受入れを進めれば、2040年代に外国人人口の比率が10%を超えると想定され、日本社会の構成そのものを根本的に変えてしまう恐れがある。実際に、欧州の経験を見れば、外国人比率が10%を超えると地域社会において様々な社会問題が顕在化し、緊張が高まることは明白である。
このような場当たり的な対応の背景には、外国人政策が法務省や厚生労働省など多くの省庁に分散し、統一的な司令塔が不在であることが挙げられる。このたび「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置されたが、これが真の意味での統一的な司令塔として機能するかは今後の運営にかかっている。また、政府は「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を毎年改訂し、令和8年度までの「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を策定しているが、これらは現状追認的な施策の寄せ集めに過ぎない。これまで政府は、「人口の未来」を主体的にデザインすることを放棄していると言わざるを得なかったが、今こそ、その姿勢を転換すべき時である。
我が国では、既に深刻な外国人問題が顕在化している。外国人による不法滞在や偽装結婚などの違法行為、社会保険料未納や高額療養費制度悪用などの制度の誤用や濫用により、国民の不安と不満が高まっている。適切な制度も合意形成も不十分なままに外国人が集住した地域では、旧来の住民との間で軋轢が発生している。これらは、政府が適切な準備をせず、急激な社会変化を発生させた結末だと言える。
さらに看過できないのは、こうした無秩序な外国人流入が我が国の安全保障に与える影響である。重要インフラ周辺や防衛施設近辺での集住、島嶼部や安全保障上重要な土地の外国資本による取得、外国人コミュニティを通じた情報流出のリスクなど、新たな脅威が顕在化している。また、社会の分断は有事における国民保護や危機管理体制の実効性を著しく低下させる。いま、人口構成の急激な変化は、国家の存立に関わる安全保障上の重大な課題ともなっている。
以上のような多岐にわたる問題に直面する中、日本維新の会は、排外主義でも場当たり的な受入れでもない「戦略的外国人受入れ」の立場から、真に我が国の経済的、文化的成長に資する外国人の適切な受け入れを推進する一方で、労働人口対策としての安易な移民政策を抜本的に見直し、日本人と外国人がともに安心して暮らせる豊かな社会を実現するため、以下の対策を早急に検討・実施することを政府に提案する。具体的には、本提言書の内容を毎年改訂される総合的対応策に確実に反映させるとともに、令和9年度からの次期ロードマップにおいては、外国人比率の上限設定を含む戦略的な人口政策として位置づけ、抜本的な制度改革を盛り込むべきである。
◾️結び:総括と今後の展望
我が国の出生数は2024年に過去最少の68万人余りを記録した。少子化の進行は政府の想定より15年も早まっており、日本社会はこれまでの前提や計画が通用しない「人口構成の臨界点」に直面している。
そうした中、本提言は、労働人口減少を背景に無秩序に進む外国人受入れがもたらす社会の分断と混乱を防ぎ、日本人と外国人がともに安心して暮らせる秩序ある社会を実現するための具体的な道筋を示すものである。
我々が提示した三つの柱―「マクロの制度設計」による総量管理と戦略的受入れ、「ミクロの問題対処」による現場の課題解決、そして「国家安全保障の強化」―は、いずれも日本社会の持続可能性を確保するために不可欠な要素である。これらの施策を総合的に実施することで、外国人受入れに伴う負の影響を最小化し、真に必要な分野での適正な受入れを可能にする。
特に重要なのは、諸外国の失敗から学ぶことである。ドイツでは外国人比率が16%に達し、極右政党の台頭と社会の分断を招いた。また、財政的分析によれば、外国人受入れは長期的には社会保障負担の増大をもたらす。これらの事実を踏まえ、外国人受入れは真に必要な分野に限定し、持続可能で秩序ある受入れ体制を構築するべきである。
同時に、労働力不足の問題が、安易な外国人受け入れにつながることのないよう、省人化技術の導入、AIやロボティクスの活用、DXによる生産性向上、規制改革による新産業創出、女性・高齢者・障害者の労働参加促進など、国内の潜在力を最大限に引き出す改革を進めなければならない。
労働人口減少という課題の解決は、外国人の流入によってではなく、日本人の出生率の改善、および、人口減少を前提とした社会構造の転換によってなされるべきであり、一方で外国人の受け入れは我が国を経済的・文化的に豊かに発展させる人材の獲得という目線で行われるべきである。
日本の強みを活かした持続可能な国家モデルの構築こそが、次世代に対する我々の責務であり、本提言の実現こそが、人口減少時代における新たな国家運営の道を切り拓く第一歩となる。
政府には、本提言を総合的対応策やロードマップに速やかに反映させることを強く求める。
鈴木法務大臣への提言書手交後、記者会見を行いました。併せてご覧ください。
※鈴木法務大臣が取り組んできた勉強会で取りまとめられた「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理」も参考までに。問題意識が重なる部分が多くあり、法務大臣の立場でこのような踏み込んだ論点整理を行われたことに敬意を表したいと思います。
【概要】外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理
【本文】外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理